論文要旨

日本病院薬剤師学会 関東ブロック第49回学術大会 メインシンポジウム 論文要旨

自動入庫払出装置、自動薬剤受取機、医療情報連携基盤を用いたロボット薬局の開発

〇渡部 正之
株式会社メディカルユアーズ

 次世代の薬剤師に求められるものは何か。これからは医薬協業の時代であり、国民が薬剤師の存在意義を実感し得るだけの対人業務を遂行する能力が不可欠とされる。しかしその能力を発揮するためには、まず延々と繰り返されてきた単純労働と対物業務から薬剤師自身を解放しなくてはならない。テクノロジーによってその解放を実現してはじめて、薬剤師の本質的業務とは一体何であるかという哲学的思考が呼び起こされ、あらためて薬剤師という職業を再定義することが可能になるだろう。
 しかしながら、欧米諸国と中国ですでに成功している調剤業務の自動化が、我が国ではまだ実現していない。それは調剤業務の大部分を占める錠剤の取り扱いにおいて、日本がPTPシートで計数調剤を行うという世界でも極めて稀な文化を有することで、技術開発がガラパゴス化し、開発競争が停滞していることが最大の原因であると考える。超高齢化社会を乗り越えるためには、薬剤師の活躍の場を世界水準以上に広げる必要があることからも、調剤業務の自動化は我が国の医療における必須かつ喫緊の課題であると考える。
 そこで、計数調剤を自動化する発想を逆転させ、世界標準である箱出し用調剤機器を改造して計数調剤が可能な日本仕様の自動入庫払出装置を開発することで調剤業務の自動化に挑戦した。これにより、医療ミスが起こり得ないシステムを構築し、国民を医療事故から救い、薬剤師が対物業務から解放されることを期待したい。
 また、機械化のもう一つのメリットとして、調剤スピードを上げることが期待されるが、これまで様々な工夫によって薬局での待ち時間を短縮する試みが報告されてきたものの、国民のニーズからすればその効果は決して十分とは言えない。待ち時間を減らすのではなく、なくすための仕組み作りを考える必要がある。このことは、調剤業務の機械化と同時に、医療情報のICT化が不可欠であることを意味すると考える。
 そこで、自動入庫払出装置とEHR(Electronic Health Record:医療情報連携基盤)を連動させることによって、医療情報のICT化に挑戦した。加えて、患者がいつでも調剤済み薬剤を受け取れる自動薬剤受取機も日本で初めて開発した。正確でタイムラグのない調剤ワークフローを開発することで、忙しい働き世代の方々の医療アクセスをより円滑にし、企業の健康経営を支え、日本経済の活力が底上げされることを期待したい。
 梅田薬局ではこれら3つの最新技術を軸にさらに研究を重ね、調剤ミスゼロと待ち時間ゼロの早期実現に向け開発を急いでいる。世界のオンラインストアが我が国の医薬品産業と薬剤師雇用にとって大きな脅威となる局面において、オンラインストアの利便性に十分に対抗し得る実店舗型ロボット薬局が既に日本に存在するという事実が、布石として極めて重要な意味を持つと考えるからである。
 テスト段階においては、いずれの試みも成功している。今後は実際に稼働する繁忙時間帯の中でデータを集積し、エビデンスを構築したい。
 本講演では、日本初となるロボット薬局開発の経緯と新しい調剤ワークフローについて解説する。

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